コミュニケーションで納得と信頼を積み重ねる前置きトーク

相手が気づいて勝手に動く対話術

コミュニケーションで納得と信頼を積み重ねるためのコツは前置きで目的を先に伝えておくこと。

先に言ってしまえば相手もそのつもりで心の準備をしてくれますが、後で言うと相手をがっかりさせたしまったり、不満や怒りを買っていまうことがあります。

納得と信頼を左右する「先に言えば説明、後で言えば言い訳」

コンサルタントとして働き始めたころは、顧客から「こういう書類も作ってくれると思っていた」「お願いすればいつでも来てくれると思っていた」など過剰な期待や誤った期待で一時関係がギクシャクしたことがありました。今ではそういった齟齬がないように、契約時には「年間コンサルティングプラン」シートを使い、私がどんなコンサルティングをするのか契約段階で読み合わせをしています。

ここで一番伝えたいのは「やることと、やらないこと」を最初の段階で明確にしておくということです。

営業シーンに関わらず、組織内でこういった意志疎通のズレは良く起こります。「その時になったら、きちんと説明しようと思っていた」というセリフをあなたも耳にしたことがあるのではないでしょうか。では、過剰な期待や誤った期待によって起こるトラブルを回避するためには、何をしなければいけないのでしょうか。

そこで今回ご紹介するのは「前置きトーク」

私は相手に心の準備をさせ信頼関係を構築するために以下の目的で、以下の前置きトークをよく使います。

・ 事前期待をマネジメントする
・ 心構えをつくる

事前期待をマネジメントする

期待値コントロールは対人関係ビジネスではとても重要なスキルです。コンサルティングプランシートを使って読み合わせするという話をしましたが、得られる効果が拡大解釈により過剰、もしくは誤った期待をされないよう、最初に何をやり、何をやらないかと明確にしておく必要があるのです。

例えば、私は現場力を向上させることによって自走する組織づくりを支援し、ビジョン達成を実現化することをミッションと考えています。そのためなるべくワークはやらないようにしています。なぜなら最重要課題に自分の時間を使いたいからです。

具体的にどのように伝えるかというと

「私の場合どんな管理フォーマットやデータを作ればいいかを一緒に考えます。私がが作れば、私のスキルは上がりますが、職員のスキルは上がりません。なので担当者とミーティングをしてフレームを作ります。これを御院で作らせたい人、腕を磨いてほしい職員に私がやり方を教え、その資料を作ってもらいます。その方が再現性もあるし、院内にノウハウが蓄積されるので結果的には価値が高いと信じているからです。いかがでしょうか?

このように伝えると必ずオッケーと言われます。むしろ、職員教育にもなるのでありがたいとさえ言われます。これが先に言えば説明です。これをあとで言ったらどうなるでしょう?

「杉浦さんこんな資料を作ってくれるんだろうなぁ」と思っていたのに「私これは作りません」と言ったら、ちょっとムッするでしょう。

これは私が時間を割きたくないからではなく、最重要課題に時間を投下したいから言っています。私じゃなくてもいいことは、他の人がやればいいと思っているので、私でなければいけないことに集中するために別の人にやってもらうということです。

このように相手のメリットを起点に前置きするのが重要ポイントになります。

 

 

心構えをつくる前置きトーク

リスクマネジメントをしっかりやっておかないと、後になって後悔しきりということは多々あります。しかし、ある程度ダメージが予測できれば覚悟ができているので、冷静に受け止め対処することができます。このように予め心構えを作っておくためにも前置きトークは有効です。

例えば病院で改革プランを立案し、職員に周知する場合や、病院新築移転で体制が大きく変わる際に、象徴的に起こる現象があります。例えば私は、院長とビジョナリープランを策定し、いよいよ全職員に向けて発表するという段階で、必ず言っておくことがあります。

「院長、いよいよ全職員に向けてこのプランを発表するのですが、その前に申し上げておかなければならないことがあります。それは良いことと、悪いこと、2つあります。まず悪いこと。それは1~2ヶ月のうちに職員が辞めると言ってくる可能性があります。それもどういう職員が辞めると言ってくるかも大体わかっています。それは、古株で院長とも関係が近く、病院の成長速度に対し自身の成長が停滞している人です。最初は偶然かと思っていました。しかし経験上あまりにも多いので自分なりに考えてみました。これは推測ですが、今までその人たちは病院の上の人たちの動向を見て、自分の居場所はこの辺りだと漠然と思っていたのではないでしょうか。しかしその輪郭はぼやけていて大体自分の居場所はこの辺だろうと勝手に思い込んでいたのだと思います。ところが、改革プランを発表し病院の方向性が明確になったとたん、輪郭がはっきりして自分の居場所がそこにないことと気づいてしまうのではないでしょうか。また、その前から家庭の事情とか人間関係とか辞めたい理由があったのでしょうね。そこで自分の居場所がないことに気づいたタイミングで自分はここに居るべきでないと、ふと腹落ちしてしまうのではないかと思うのですがいかがでしょう、それでも職員に発表しますか?」

このように話すと、私の経験上「じゃあ、怖いからやめる」という人は居ません。むしろ、「次のステージに行くためには、ある程度の痛みを伴うことはやむを得ない」と覚悟を決めてくれます。これを後から言うと「言う通り発表したら人が辞めてしまった」とクレームリスクになりかねません。

そして、最後にこのように付言します。

「院長、しかし良いこともあります。人が辞めるということはそこに隙間ができますよね。真空の法則といって今度は新しい人が入ってきます。それも病院のコンセプトに一致した職員が入ってくる確率が高くなります。ビジョンが明確なので、おそらく院長面接でも言葉にキレがでるでしょう。一時的にパフォーマンスがダウンするかもしれませんが、これは変容進化の前触れだと考えてください」

というように最後は良いことを言って締めます。

いかがでしょうか?前置きトークは様々なビジネスシーンで使えるとてもパワフルなスキルです。是非トライしてみて下さい。

 


 

執筆者

 

 

 

 

TEPPEI SUGIURA

株式会社メディテイメント

代表取締役  杉浦鉄平

30年以上にわたる病院勤務(臨床15年、看護部長10年、事務局長5年)と、病院コンサルタント経験で培った、病院経営における人、モノ、カネすべての問題を解決するメソッドを体系化。このメソッドをより広く普及させるためにメディテイメント株式会社を設立。また、セコム医療システム株式会社顧問に就任。「病院再生コンサルタント」として、多くの病院の組織変革を実行し、高い評価を得る。現在は、コンサルティングと同時に、病院管理者研修、病院の意図を理解し、自律的に行動する医療経営人財を育成する「医療経営参謀養成塾」を運営。

 

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