医師を動かすコミュニケーション術 第一回

病院経営について

医師を動かすコミュニケーション術は病院の経営に関わる責任者にとって不可欠なスキル。
優れた戦略、優れた戦術、優れた制度があっても、成果は実行力と実践力次第だからです。特に医師が動かないと収益改善のインパクトは望めません。

医師は医師の言うことしか理解しない!?

医師に経営の意図を理解して動いてほしいのに業績(お金)の話をすると嫌な顔をされる。

病院経営に関わる方なら、経験があるでしょう。多くの医師の働き方は自分の診療ニーズが優先なので、経営の問題は二の次になります。

こんなに病院の経営環境が厳しくなっても、経営のことには無関心な医師はほとんどです。近年は事務系や看護部門でも、経営思考が育まれてきたので、病院経営をテーマにした管理者研修の依頼が増えています。しかし、その研修に医師が参加することは稀です。

医師とそれ以外の職種とは本質的な能力、資格・制度的違い(役割)から、同列で期待・評価し合わないという特性があるからでしょうか。医師とのコミュニケーションが成立しにくい一因かもしれません。

「医師は医師の言うことしか聞かない」とも言われています。大切なのは医師の診療ニーズと病院のコンセプトの一致化を図ることですが、これを組織のトップの医師である院長がやらないとなかなかついてきてくれません。


求められる医師のプロフェッショナル論

医師の仕事は 「臨床」「研究」「後進育成」 ですが、これからの医師には 「経営」「雇用(メディカルスタッフ等の地域人材)」 にも深く関わるべきと考えています。

ここで言う「経営」とは「自分の職務環境(人・モノ)を自分の責任で作り出し守ること」・・・人が無条件与えてくれるものでないということ。つまりプロフェッショナル論の大前提を示し共有することです。

しかし、こういうことは大学ではあまりしていませんし、教えてもいません。

そういう意味で、医師である経営責任者の「院長」の役割は非常に大きいと思います。(かつてのキャリアの上がり的名誉職ではない)

<院長の職務>
・患者集め(開業医回り、関連施設作り等)
・医師スタッフ集め(ここが重要)
・診療(病院としての労務モデルとなるべき業務スタイル・レベルの指針確立)
・労務負担バランスの把握(医師50名前後であれば労務内容をある程度把握することは可能)
・業務評価(数量化できない領域の適正評価)
・キャリア支援(病院としてお金や時間、機会創出で可能なこと)
要するに予算権、人事権を適正に実行することです。「俺もやるからお前もやれ」を実践する、またはを覚悟することではないかと考えます。

医師の心理属性を理解する

ここで医師の心理属性や思考の癖を知っておく必要があるでしょう。

①医師になる、医師であり続ける苦労と苦悩医師になった理由と目的はそれぞれ異なります。「医師」と一括りに出来る対象ではありません。選んだ大学、診療科、専門の理由から理解出来ることは少なくないでしょう。また、その選択が積極的理由か消極的理由によるかも重要です。幼少期から厳しい受験制度をクリアした人材層である事実とプロの技術者であり、職人でもあることをいきなり強いられる職業です。(法的にも自己責任下の専門家)

 
キャリアモデルがいない(メンターやテクニックモデルは少々存在する)
社会変化に伴うQOMLQuality of My Life)の多様化。お金、時間等医師としての人生満足価値基準の多様化(医師以外のキャリア出現化)「中期的キャリア計画」という概念の喪失。
学位、資格取得、症例経験以降の目的欠如 (医者以外高校中学の学友は、50代~がキャリアの充実・勝負時、絶頂期であることを知らない)
キャリアのピークアウトマネジメント欠如(高度技能の肉体労働者であるがゆえの身体的旬のコントロール意識の必要性)・・・この実践を誰も教えてくれません。

③医師は医師の言うことしか理解しない。これはある一定の能力と努力実行を果たした人以外認めないという結果的本質があると思います。また望ましいロールモデルが存在しないため誰のいうことを聞いていいかわからないから聞かないという人も増えてきました。正しく客観的に導いてあげられる医師としての先輩や、それに値する存在が必要なのではないでしょうか。

 

医師が働く環境の変化

 医療現場の問題点の根源は、財政負荷増大の人口減国家であること。今の保険制度下における地域診療において「長寿化からくる診療の総老年内科化と、それから逃れたい高度専門集団から生じるジレンマ」という医師になれた人にしかわからない葛藤があるのではないでしょうか。
また、国民の医師や病院に対する多大な医療提供内容への期待。医療と福祉の境界のあいまいさという労務の多種・多様化の問題病院施設遍在(機能している施設)と競合化。患者の顧客化(サービス業務化)など医療を取り巻く環境は大きく変化してきました。

医師があなたの意見に耳を傾けるには?

 医師は基本的に自分の専門範囲で自らの存在価値を高め、それを表現し感謝されたいと思っています。将来のことはわからないから「今は好きなことしかしたくない」という思いもあるでしょう。しかし今の地域医療(老齢医療)においては実現しにくいという問題があります。近年は大学でも同傾向にあるように感じています。
 医師と病院(雇用側)と患者それぞれが求めることのずれが大きくなっていくと、消去法的キャリア選択が無難、例えば「何をどうしたい」より「こうならないようにしたい」みたいな  考えに傾きやすいのではないでしょうか。
そのうえで 能力者ゆえの自己実現欲求の総合化という観点から、具体的かつ実行可能な「目的達成」という刺激を与えてあげることではないかと思います。
次回は具体的な医師との関わり方についてお伝えします。

病院の経営を本気で改善したいあなたへ

※この記事の対象者(病院経営にかかわる責任者さま)
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わたしも、30年にわたる病院勤務で、ICU部長、看護部長、副院長、事務局長を経験しましたが、経営改善にむけて努力するほど、周りとのミゾが深まりました。(最終的には、病院で一番、嫌われている存在になりました…)

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執筆者

 

 

 

 

TEPPEI SUGIURA

株式会社メディテイメント

代表取締役  杉浦鉄平

30年以上にわたる病院勤務(臨床15年、看護部長10年、事務局長5年)と、病院コンサルタント経験で培った、病院経営における人、モノ、カネすべての問題を解決するメソッドを体系化。このメソッドをより広く普及させるためにメディテイメント株式会社を設立。また、セコム医療システム株式会社顧問に就任。「病院再生コンサルタント」として、多くの病院の組織変革を実行し、高い評価を得る。現在は、コンサルティングと同時に、病院管理者研修、病院の意図を理解し、自律的に行動する医療経営人財を育成する「医療経営参謀養成塾」を運営。

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