院長の医師マネジメント力「院長がこの病院をどうしたいのかわからない」

病院経営について

院長の医師マネジメント力が問われています。医師の働き方改革が進まない中、医療現場では労務過多を招く方針転換により医師から不満の声が増加。それは「院長がこの病院をどうしたいのか、よくわからない」という声。理由は地域ニーズを理解せず場当たり的に新しいアイデアを出してしまうこと。院長のマネジメント力が問われます。

医師の働き方改革

医師の働き方改革に関する有識者検討会は今年3月、一部医師の残業時間の上限「年1860時間」を含む報告書をまとめました。4月から一般労働者に適用される働き方改革関連法の上限「年720時間」をはるかに上回り、過労死ラインの2倍の残業を容認したことになります。

※参照 医師の働き方改革答申書案(m3.com)

働き方改革は、本来あるべき働き方に対して揺り戻しが起こっているというトレンドですが、医療という特殊な分野でもそこから逃れることはできなくなってきました。

民間小規模のオーナー系の病院では、これまでおざなりになっていた「明け」の勤務を廃止するという取り組みが増えつつあります。
しかし、この対策は働き方改革というより、医師は負担がたまりやすいので、
パートの外勤医師を外来シフトに入れて、常勤医師の維持を図ろうという考えが働いています。
特に200床未満の病院は医師が集まりにくくなってきているので、何か特色をださなければならないという、労務のわかりやすい負担軽減を入り口にアピールする病院が増えているということでしょう。
病院からすると全体の収益が落ちているのに働き方改革が求められるというダブルパンチ。サービス残業も本格的に許されなくなってきています。ミドルマネジメント層は祭日や夜中に仕事をする慣習が残っているかもしれませんが、20代30代の人たちは守られてきている時代なので、看護師やセラピストなど数やシフトに巻き込まれている人は、いろんな人たちのとの接点で、「この業界はおかしい」と早めに気づいてしまいます。
モチベートアップの観点からも取り組まざるを得なくなっていますが、まだまだ手探りでやっているので成功事例は媒体を通じてもあまり聞くことはありません。

医師と病院の心理的距離

若手の医師で、今の病院で若干不満のある人たちからよく聞かれるのは「院長がこの病院をどうしたいのよくかわからない」というセリフです。医師によって多少言いまわしは違いますが、共通するのは「どうしたいのかわからない」という表現。

これは病院全体が忙しくなってきたタイミングで、新しいことを始め、労務が過多になり慣れない仕事をやらされたときに強く感じます。
例えば今まで断っていたこういう患者を受けていこうとか、救急をもっと受け入れていこうみなたいなケースです。
しかも、たまたま新しく着任した医師や外部の医師との関係の中から、偶発的、属人的理由で起こることが多いので、場当たり感が否めません。

原因は自院とエリア内で他病院との機能的バランス(医師の配置バランス)を考えず新しいことをやってしまうことです。

例えば300床、400床の病院がエリアにあったとしましょう。すると患者さんは、ほぼそちらに取られてしまいますが、どちらも脳外科の血管内治療をやっていなかった場合、自院がやれば患者が回ってくるかもしれないと考え、医師を招聘します。
しかし、実際脳外科を取ろうとしたら、神経内科や他の内科など体制を充実していかないと受け入れられないのですが、それを無視して隙間のニーズを狙っていこうと考えます。
結局地域のニーズに合っていないので狙ったほど患者は来きません。またやったことがない診療なので人や道具の手間に負担がかかるとか、今まで主役だった医師たちが日陰になりそうな匂いがしてくるなどで不満が蓄積していきます。
病院の活性化という意味で忙しいのは悪ことではありませんが、地域ニーズに合っていないのにアイデアを出したところでうまくいきません。
そういう構造があるのにコミュニケーションだけよくしておこうと、医師との対話を増やしますが、それで意思疎通が少しよくなったとしても、経営がうまくいくかどうかは別問題です。

院長は近隣病院の医師をよく知らない

地域ニーズを簡単に知るには、他病院の医師の情報を把握することですが、院長が同じエリアの病院でどんな医師がいるかさえわかっていないことが多く驚かされます。
日頃の連携や情報のやり取りで、こんな先生がいるくらいは知っていても、その医師がどのくらいの診療レベルで、どういう患者をどのくらい診ているのか、どういうことを狙っているのかということを知りません。院長が整形だったら整形のことは知っていても脳外科のことはわからないのが現実。
コンビニやスーパーの店長で考えれば、その商圏の中でどこに顧客がとられていてそこで何が求められているのか、同じもので勝負するのか、違うものを売りにしていくのか、別のトピックを作ってどちらも取りにいくのかなど、
いろんな作戦がありますが、院長が情報を持っていなければどうしようもありません。
せめて、〇〇病院の▽▽先生は夜中でも飛んできてくれてとても良い先生と評判くらいは知っておかなくてはいけません。
もちろん医療はスポーツのうような勝ち負けではなく、緩やかに協調していくことが求められますが、相手もつぶさないまでも、
勝たなくてはいけないという感覚さえもっていれば、相手の4番の苦手なコースは何かくらいは知ろうとするはずです。

医師にはやり方と意味づけをセットで教える

昔と違って恵まれているのはこれ以上病院が増えないことです。増えないから既存の病院のことさえ知ってさえいればよいわけです。新しいところが出てくることはなく、今の病院と競っていればよいというのが現在の医療マーケットのメリットとも言えます。
良い医師がいてそこに患者が集まっていれば、自分の病院には患者少なくなるのは自明なのに、他を知らないがゆえに自分の病院は患者を取らないと責める構図があります。だから何を考えいるかわからないという齟齬につながるケースが多いのだと思います。

結論から言えば、これから超高機能病院以外はほとんど老齢疾患を診ていかないといけません。オペも年々減少しています。検診に積極的に取り組み、そこから拾っていかなくてはならない状況です。

つまり内科系のアクティビティが高くないと増患は難しい。いかに内科医師が患者を獲得してこの病院に定着させるかが肝になります。

あの病院のオペが多いのは、たくさんの外来をこなしてくれる先生がいるから、なぜこんなに多くの患者を診れるのかというと、外来をばっちりやってくれる先生がいるから。
なぜ救急をやっていないのに患者が増え続けるかというと、その先生がコミュニケーションベースでよい医療をやっているからといった、最後は医師のキャラクターになってきます。
しかし、そこに目をつけている病院とそうじゃない病院があるのが現実。
せいぜい各科部長とナンバー2くらいまでの情報を知っていれば「他ではこんなことやっているみたいだから、もうちょっとこういうことをやっていきたいと思うがどどうだろう?」と言えば、各科の先生ももっと協力してくれるはずです。
院長は「何をやるか」だけではなく、「なぜやるのか」という意味付けをセットで伝えることが大切です。





 

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執筆者

 

 

 

 

TEPPEI SUGIURA

株式会社メディテイメント

代表取締役  杉浦鉄平

30年以上にわたる病院勤務(臨床15年、看護部長10年、事務局長5年)と、病院コンサルタント経験で培った、病院経営における人、モノ、カネすべての問題を解決するメソッドを体系化。このメソッドをより広く普及させるためにメディテイメント株式会社を設立。また、セコム医療システム株式会社顧問に就任。「病院再生コンサルタント」として、多くの病院の組織変革を実行し、高い評価を得る。現在は、コンサルティングと同時に、病院管理者研修、病院の意図を理解し、自律的に行動する医療経営人財を育成する「医療経営参謀養成塾」を運営。

 

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