人を動かす方法として、スタッフのモチベーションコントロールが注目されますが、モチベーションは意志や根性論ではありません。人がモチベーションが維持できないのは人間の脳のしくみがそうなっているからです。
モチベーションが続かない理由
感情とはすぐに消えてしまうもの。
電車で足を踏まえてイラっとしても、一週間も引きずるひとはいません。また、自己啓発セミナーや、心を動かされる研修に参加し「よし、これならできそうだ。明日から頑張ろう」とモチベーションが上がりますが、やはり一週間もしないうちに元にもどってしまいます。
私も試合前(キックボクシング)に「ロッキーファイナル」を観て気持ちを高揚させていましたが、試合当時になると、その時の感情はすっかり失われ不安と緊張に襲われます。
人の脳は「安定化思考」という現状維持メカニズムがあり、大きな変化を嫌がる特性があります。また脳は否定と肯定を区別しません。それが良いことであっても、悪いことであっても、急激な変化には対応できず、振り子のように元に戻ろうとするのです。
ダイエットをしたいと思っても、どうしても食べてしまう、運動が続かない。そういう人は自分を「意志が弱い人間」だとか、「本気で痩せる気がないからだ」と考えてしまいがちです。
しかしそれは違います。その人だって太っていることによる苦しみを毎日感じていて「このままでは嫌だ、変わりたい」と願っていて努力もしています。それなのについ食べてしまったり、運動をさぼってしまうのはなぜでしょうか?
もうお分かりの通り、その理由は現状維持メカニズムが今の体重を維持しようとするからです。
モチベーションはコツコツ積み上げる
誰もが前向きに前進したい。少しでも成長したいと願っているのに心のブレーキがかかってしまうのは、現状維持メカニズムという潜在意識によるものですが、潜在意識に悪意はありません。もともとはあなたの現状をできるだけ維持できるように守ってくれているだけなのです。
あなたも子供のころ冒険心で何かチャレンジするとお母さんから「危ないからやめなさい」と怒られたことがあるでしょう。現状維持システムとはこの「親心」のようなものなのです。これは組織マネジメントに関わる人も知っておくべきことです。組織改革がうまくいかないのはこのメカニズムが深く関わっているからです。
では脳は全く変わってくれないかというと、そうではありません。もう一つ特性があり、それは大きくは変われないけれど、少しずつなら変化を受け入れてくれるというものです。この性質のことを「可塑(かそ)性」と言います。粘土のかたまりを指で押すと少しへこみますが離しても元には戻らずその形のままですよね。これが「可塑性」です。つまり脳は、小さい変化は受け入れるが、大きく変わろうとすると、振り子のようにスタート地点まで戻ってしまうのです。
師長から看護部長になったばかりのころは、まだ看護部長としての「セルフイメージ」が持てなかったので、周りから「部長」と呼ばれることに違和感があり、自信が持てませんでした。この時点では安定化思考が急激な変化に抵抗していたのでしょう。しかし3年もすると看護部長として仕事をこなし実績も積み重ねているので自覚が生まれ、セルフイメージが作られていました。
モチベーションを燃やし続けることができる人とは
最初の一歩にこそ一番大きなエネルギーを必要とします。しかしまじめな人は完璧主義なので、エネルギーが満ち溢れているときは、一気にここまでやろうと決意して臨みます。しかし、感情は放っておいたら消えるものということをもう一度よく理解してください。
それでは、放っておいたら消えてしまう感情を、どうやって定着させればよいのでしょうか?
消えていく感情を定着させる方法はただ一つ。それは、ほんの少しでよいから、その感情を「行動」に転換することです。これは、みなさんが大切なことを忘れないためにメモを取るのと同じです。本を読んでとても刺激を受けたとしたら、それを「よかった」と感動して終わるのではなく、本を閉じると同時にそれを少しでもいいから実践してみる。それが習慣化していくと、だんだんやらないことの方が居心地が悪くなってきます。
私は人に教える仕事なので、学んだことをアプトプットするという目的でメモをします。次にそれを自分が実践するということを習慣化しています。そのうちやろうと考えると、ご存知のように「そのうちは、まず訪れません」
外的モチベーションでは人は動かない
あなたはリーダーとしてこんな悩みを抱えていませんか?
- スタッフは指示待ちで、言われたことをしかやらない
- 自分はリーダーとしてチームを引っ張っていくタイプではない。
- 人の上に立つものは孤独。「嫌われてなんぼ」だと諦めている。
- 今のメンバーや組織では、うまくいかないと思っている
- はれ物に触るようにしか、チーム作りがすすめられない
このように組織のパフォーマンス向上は、スタッフのモチベーションコントロールが重要なテーマです。しかし、外から与えるモチベーションは一過性のものでしかありません。前述のとおりセミナーや研修で刺激を受け、新たな運命感に燃え、明日からどんな逆境にも耐えていこうと決意したとしても、職場に返るとまた現実に直面し、感情は以前の状態に引き戻されてしまいます。スポーツの世界でもコーチが変わったとたん勝てなくなることはよくあります。
さらにモチベーターは人ばかりではありません。実は最大のモチベーターは「日常業務」そのものです。朝からあなたを起こし、一日中奔走させるのは「やらなければならない」あるいは「すべき」という義務感。そして、この種のモチベーションが過剰になったとき現れるのが「ストレス」です。
モチベーションという言葉は本来「行動に移す」という意味です。しかし大半のひとはそれを「誰かに決められて動かされる」という意味に捉えているのではないでしょうか。
真のモチベーションは内からしか得られません。
次回は自分自身がモチベーターとなり、自らの状態管理をすることで、行動が変わり、結果としてスタッフへの影響力を最大化するリーダーとしての「あり方」についてお伝えします。
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