医師を動かすコミュニケーション術 第二回

病院経営について

医師を動かすコミュニケーションのポイントはタレントマネジメント。医師とそれ以外の職種を同列で評価するのは難しく、医師は専門領域で存在意識を感じ、アピールできる環境を望んでいるので、どうやって乗らせるかがポイントになります。

医師の働き方

日本の医療は、医師の自己犠牲的な長時間労働により支えられ危機的な状況にあると「医師の働き方改革に関する検討会」(厚労省)で発表しています。特に20代、30代の医師は他職種に比べ抜きに出た長時間労働を強いられ「自殺や死を毎週又は毎日考える」割合が 3.6%に達するというデータもあります。

一方、赤字にあえぐ病院では、勤務医組織に寄生する、ノンワーキング常勤医師に頭を痛めています。正当性のない理由で救急を断り、入院患者は1桁しか持たない9時ー5時部長。週2コマの外来以外、何をしているかよくわからない副院長の爺医。「医師不足」と言われますが、実際は勤務医不足。「当直や残業可能な勤務医の実働部隊不足」が問題なのです。

それぞれ専門科ごとの特性、医師の年代、あるいはなぜ医師になったのか、その動機。また、これまで何を考え何をやってきたか、あるいは先々の展望、仕事における人生のウエイトまで様々な条件によって働き方は異なります。医師の働き方改革というと主に過重労働が注目されますが、スキルアップを望む医師は長時間労働を負担に感じていない場合もあります。

医師のマネジメント

チーム医療とはいえ、医師とそれ以外の職種を同列で評価するのはやはり難しく、資格、求められる能力、制度(枠割)の違いを理解しなくてはなりません。

医師がサインしないと1円も医療収入が上がらないという、医師主導の仕事になりやすく「自分たちが稼いでる」感を生みやすい。特に急性期、手術、手技系の診療科が天下になる傾向があります。

数値評価しにくい診療科が陽の目を見ない傾向がありますが、実はそのような科こそ大切です(一般内科系になりやすい)。院内での相互補完的な疾病連携とインセンティブを積極的に与え、対外的にもわかりやすく評価する必要があるのではないでしょうか。

本来、それぞれができないことをお互いがサポートしながら、できるようになっていかないといけないにも関わらず、 若い医師の中には自分が専門医として「知っていることをやるのは患者のためになるけど、知らないことをやるのは患者のためにならない」「それを僕らにやらせるのはよくない」という論理で、よくないことをやらせる病院に対し批判的な態度をとります。

医師を評価する基準

病院の中で医師の人員構成比は少数です。しかし、科ごとでもそれぞれ特性が違いますし、たとえ同じ科であっても3人いれば3人とも考え方や価値観が違います。構成比が仮に数パーセントであっても100人いる医局であれば100通りの対応が求められてしまします。ですがそれは無理でなので、ある程度優先順位を決めて考える必要があります。

つまりは、病院にとってインパクトがある医師を優先せざるを得ないということです。収益への影響力、人間関係の影響力といった、要は良い影響を与えている医師を優先し、そういう医師たちの働きやすい環境を作っていくということです。

病院ごとのテーマが近隣のマーケットによって違いますので、その貢献度にフォーカスして評価をするということになりますが、歴史のある科や主要な科は大学が関連していることが多いので、そこを考えて体制づくりをする必要があります。

医師の共感ポイント

最近よく感じるのは、院長と医局とのコンスタントな会話がすくなくなり、お互い遠慮や思い込みでコミュニケーションギャップが生じるという問題です。

本来やることと、やらなくてよいことのラインを引いて、前もって理解させることはできるはずですが、 大学から頼んできてもらっている手前、院長も遠慮して言えないケースがあります。だったら「できることやってくれればいい」といっても、実際はそんな患者ばかりじゃありません。

院長が臨床をやっているのであれば、もう少し丁寧にそういうことを普段から話をし、やること、やらなくてよいことのライン引きを各医師ごとにやるべきではないかと思います。10人20人くらいだったらそのくらいの会話はできるはずです。

理解のギャップをお互い埋めていく、無理をさせるということではなく、頑張ってもらわなくてはいけないことと、医師の専門を生かせることのギャップを実際の患者さんの層を踏まえたうえで話をすることが大切です。
実質的なプレイングマネージャーを気持ちよく仕事させかつ評価し、そのパフォーマンスレベルがその病院のスタンダードなんだということを周囲にも浸透化させたうえで、収益や人間関係など含めた評価をすることを伝えておけば、ある程度納得されるはずです。

医師への具体策は経営と現場をつなぐ架け橋となる存在がカギ

具体的には個別のメリットを考えることでしょう。それは処遇ではなく、キャリア上の目的です。例えば症例がない場合でも、院長の人脈の中で個別の機会を創出するなど、要望しそうなことを作り上げていくことです。何でもいい、個別に話し合えば何か見つかるはずです。(私の経験上)
例えば、病院が欲している30代40代の手技を習得したいのか、発揮したいのか、教えたいのか、また名前を売りたいのかという要望があったとします。
すると、そのための道具や場所、人脈。家族がいれば、お金や時間が必要になってくるなど、欲求の種類が増えます。
それは、権限があるひとが、それだけ調整する種類が増え話し合いが有利になることを意味します。これを甘えさせないギリギリのラインで与えてあげることです。
付け加えると、臨床ポジションのそれぞれのステータスを守っていかなくてはならないという常識が働きますので、医師はある種タレントのような存在です。どうやって乗らせるかがポイントになるでしょう。
オンリーワンであることを存在価値とする考え方は強く、やはり頼られればそれに応えたいと思うはずなのです。
さらに公的な資源と考えて支援していく存在でもあるので、その資源に対しどう付加価値を高めるかという支援の発想に加え、プロダクションの発想を合わせてもつことが求められるのではないでしょうか。
つまり管理するという発想がそぐわないということです。
うまくいっている病院を見ていると コミュニケーションをうまく取れる人を配置しているところが多いようです。医経分離といわれていますが、これからは経営と現場の懸け橋になる「院内通訳家」のような存在が必要です。必ずしも事務長のような役職者である必要はありません。
病院全体を俯瞰することができ、経営数字をかしこく使ってコミュニケーションの質を向上させる能力があれば、職種に関係なく「医療経営参謀」として今後の医療を支える活躍が期待できます。

 


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執筆者
 

 

TEPPEI SUGIURA

株式会社メディテイメント

代表取締役  杉浦鉄平

30年以上にわたる病院勤務(臨床15年、看護部長10年、事務局長5年)と、病院コンサルタント経験で培った、病院経営における人、モノ、カネすべての問題を解決するメソッドを体系化。このメソッドをより広く普及させるためにメディテイメント株式会社を設立。また、セコム医療システム株式会社顧問に就任。「病院再生コンサルタント」として、多くの病院の組織変革を実行し、高い評価を得る。現在は、コンサルティングと同時に、病院管理者研修、病院の意図を理解し、自律的に行動する医療経営人財を育成する「医療経営参謀養成塾」を運営。

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