人を動かす言葉とは?

相手が気づいて勝手に動く対話術

言葉が世界を作る

スポーツ界では今から試合が始まるロッカールームで、その本番に向かっていく選手に言う、激励のショートスピーチのことをペップトーク(PEP TALK)と呼んでいます。受験性に「すべる」とか「落ちる」という言葉を使わないのと同じで。スポーツでも「負ける」とか「ミスする」という言葉は使わず、前向きな言葉を選択します。これがペップトークの考え方です。

日本を代表するアスレチックトレーナー岩﨑由純はアメリカのスポーツ現場で学んだ「勇気を与える感動のスピーチ」を、自分、家族、仲間に伝えるコミュニケーションスキルとして確立しました。

私は以前、岩崎先生のお話を聞く機会がありましたが、社員の能力向上、組織の生産性の向上、売上の拡大が求められるビジネスにも十分通用するものであると感じました。

スポーツ界で伝説になった、なでしこジャパンの佐々木則夫監督が2011年の女子ワールドカップサッカー決勝PK戦を前にした選手たちに送った一言は「絶対はずすな」ではなく「思いっきり楽しんでこい!」でした。

東日本大震災で東京消防庁ハイパーレスキュー隊の奥様が爆発した福島第1原発の消火活動に向かう夫にメールで送った一言は「貴方の身に何かあったらどうするの?」ではなく「日本の救世主になってください!」でした。これも代表的なペップトークで、ネガティブな言葉はひとつも使っていないのが特徴です。

人は言葉で考え、言葉で情報やアイデアを伝え、言葉で相手の感情や評価を知り、言葉で喜んだり、悲しんだりします。

指導者なら言葉を磨こう

17兆円とも言われる巨大産業のプロスポーツ界では、選手が日々の練習の中で、そのスポーツに必要な技術や体力を磨いて今日という本番の日を迎えるよう、監督や指導者は言葉の力を磨いて一緒にその場を迎えています。どんな言葉をどのように伝えるか、考えに考え抜いてその場にいます。言霊に命を吹き込めない者、言葉にパワーを与えられない者は、プロスポーツ界では指導者にはなれないのです。

ビジネスシーンや学校、家庭でも同様に、上司や教師、親がどんな言葉を使うかで相手の思考や行動に大きな影響を与えます。良かれと思った一言が、部下のヤル気を損ねる事例は枚挙に暇がありません

日本の教育を悪くしたと言われる質問

私が新人ナース時代、先輩から怒られると、よくこんな質問をされました。「どうして、わからないの?」と。(どうしてわからないのかわかっていたら、わかっている・・)心の中で呟いたものでした。これはパワハラになります。答えることができないからです。本人に答えることができない質問のことを、コーチングの世界では「否定質問」と言います。

否定質問は肯定質問に変えることで解決します。先ほどの事例を肯定質問に変えるとどうなるか。極めてシンプルです「どこまでわかったのか考えてみようか」

このように質問すれば、もう本人にしか答えられません。現状を確認して、あとは知識や情報など必要なことを指示してあげれば良い訳です。

例えば「そこまで理解しているなら、次にこのことについて調べてみようか」と指示すれば相手は行動できますよね。大事なのはその人が今持っている力を受けいれ承認し、何が必要かを考えるということです。

承認には3つあります。すなわち①結果承認②行動承認③存在承認です。職場では評価指標が定量化しやすいということもあり、人事考課でも成果実現度や発揮能力など、ほとんどが結果承認と行動承認をベースとした業績指標になっています。

しかし、その人が持っている力を受け入れ承認するのは、存在承認でこれが最も重要です。できていないことに目を向けるのではなく、どこまでできたかを認めてあげることで、本人の問題解決意欲が顕在化し、主体的な行動が喚起されます。

言葉が左右する行動と結果

脳は相対的理解ができませんので、主語を区別しません。もし相手の失敗を願えと、それが他人のことなのか自分のことなのか区別しないので、ネガティブなイメージはそのまま現実化すると言われています。

復活を遂げたプロゴルファーのタイガーウッズは、全盛期相手がパターを打つ時「入った!」とイメージするそうです。普通「はずせ」とイメージするところですが、ウッズは「カラカラコーン」というカップインの瞬間をイメージします。

もし相手がパットを打つ時にはずせと願っていたら、脳は失敗するのが相手なのか自分なのか区別しないので、自分がパットを打つ時に、はずすことをイメージし、失敗する確率が高くなります。このように良くも悪くもイメージに引きずられるのはネガティブな言葉に原因があります。

言葉とイメージ

これから言うことを想像しないでください。

「赤いバラの花束が部屋一面に・・」

どうでしょう。もう想像しますよね?赤いバラをと言った時点でバラは目的語になっているので、必ずイメージします。つまり目的語=イメージなので「ミスをするな」「駆け込み乗車はおやめください」という言葉は「ミスをしろ」「駆け込み乗車しろ」とほぼ同義語になるのです。

してほしいこと変換=肯定的な言葉の上書き

大事な場面で一度失敗すると、再び同じような場面で60兆の細胞達があなたに語りかけてきます。「今日はどのように失敗しますか」と。その時「前回はここで躓いたんだよな」とつい答えてしまうと、その瞬間細胞はそれを主が望んでいると反応し、トラウマのように失敗をくり返すのです。

では、こういう場合どうすればよいでしょうか?そういう時は「上書き」してしまいましょう。ネガティブなイメージは消す努力をするのではなく、それをいったん受け止めポジティブなイメージで上書き保存してしまうことをお勧めします。「絶対ミスをしない」と無理に消そうとすると、ますます「ミス」が大きくなっていきますので、成功のイメージで上書きしてしまうのです。そしてイメージは目的語ですから、指示や命令、叱るときも言葉を選ぶことができます。「~するな」ではなくポジティブな表現で「してほしいこと」を伝えます。

状況(現状) 否定語 肯定語
難しい仕事に挑む 失敗したらどうする どうしたら成功するか一緒に 考えよう
部下が同じことを聞いてくる 何度言ったらわかるんだ ポイントしっかり聞いてメモ しようか
組織や待遇に不満を持っている 文句を言う前に自分の責任 を果たせ どうしたら良い組織になるか 一緒に考えよう

 

繰り返しますが、言葉が世界を作ります。あなたが普段どんなイメージを持ち、どんな言葉を使うかによって、あなたとあなたの周りの人たちの行動や結果に影響を与えるのです。




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