医師を動かすコミュニケーション術 第三回

相手が気づいて勝手に動く対話術

医師を動かすコミュニケーション術の第三回は、院長が医師との面談でやるべき3つのルールについてお伝えします。

医師とのコミュニケーションは難しい?

医師とのコミュニケーションは難しい、そう感じていませんか?
思いやりや、やさしさのない正論で詰め寄る人を「ロジハラ(ロジカルハラスメント)」と呼んでますが、一部の医師には、敵意で自分の落ち度をなくし相手を論破するタイプの人がいます。
こちらが客観的に正しいことを伝えて「やってください」とお願いしても「やりたくない」という医師。
さらにそういう医師はやらない理由を考えるのもうまく、ロジカルな悲観論を繰り広げます。そういう医師とのコミュニケーションは本当にストレスです。
ひとくちに医師といってもそのキャラクターは千差万別。
個人と違いと言えばそれまでですが、病院職員からみた医師のイメージは、プライドが高く論理的で短気、傲慢という側面が強いようです。
私も看護部長時代、パワハラ医師の対応に苦慮した経験が何度もありますが、コンサルティングを通じて医師と深く関わるようになってからは、医師は頭の回転が速くロジカルだから、理解が早く話しやすい存在に変わりました。
医師は基本的に自分の専門領域で力を発揮し、かつ認められたい。オンリーワンであることを自らの存在価値とする考え方が強いですが、やはり頼られればそれに応えたいと思っています。
自分の専門性や診療ニーズ、仕事がしやすい診療環境のデザイン、40代の医師であればキャリアに対するピークアウトマネジメントなど、医師が話を聞く姿勢を作るテーマはたくさんありますので、まずは具体的な医師の悩みや願いを知ることでしょう。
※医師の心理属性については「医師を動かす3つの理由」を参照

医師とコンスタントな対話をしていない経営者

院長にとって医師(医局)の管理は頭が痛い問題です。

医師は医師をコントロールしないという精神風土もあり、医局内のチーム意識は希薄です。そもそも院長は診療が忙しいので、ゆっくり医師と向き合う時間すらありません。

しかし、医師との対話が減れば精神的距離も離れ、経営と現場、立場の違いによる危機感のズレは広がるばかりです。

この状態が続くと、いざというときに協力が得らることができません。

院長もリアクションが薄かったり斜に構えられたりする医師への対応はストレスなので、診療の忙しさもあり必要以外の対話を避けてしまいます。

また、医師との関係性構築が大事だとわかってはいますが、きっかけをつくれず先送りしてしまうこともあるでしょう。

「医師が働かないから、しょうがなく自分がやっている」と院長は言いますが、その背中を見て触発される医師はごく一部で、たいていの医師は打てど響かぬ傍観者、周りが困っていても自ら行動しません。

医師が経営の意図を理解して動いてくれない理由のひとつに情報の不一致があります。したがってやるべきことは情報の一致化。そのためには医師とのコンスタントな対話が不可欠なのです。

医師を動かすコンスタントな対話の3原則

最初のステップはコンスタントに医師と会話をする時間を決め、スケジューリングすること。

時間は月1回30分程度、これをしっかり時間を決めて実行します。特にテーマは決めなくても大丈夫です。

「診療や働き方で気づいたことや感じたこと」「今、特に気になっていること」など公私問わずなんでもいいので、とにかく話を聞く姿勢を示してください。

医師との面談と考えると、つい構えてしまい「何を言うか」に意識が向きがちですが、目的は話をさせることです。最初は気負わず気楽に向かいましょう。

その中で、いろんな要望や欲求が出てくるかもしれませんが、そういうものをたくさん出してもらった方が、権限がある人にとってはそれだけ調整する種類が増えるので有利になることを意味します。

最終的にはこれを甘えさせないギリギリのラインで与えてあげることで関係性が変わりあ始めるのですが、そのゴールに導くために対話で大切な3のルールお伝えします。

1.自分の言いたいがあっても我慢する

2.相手の言うことを黙って聞く

3.聞かれたことに対して適格に返す

私はこれまで関わってきた院長、理事長に、これを3カ月続けてくださいとお願いしています。

少し解説します。

1.言いたいことを我慢する。

これができてない院長は少なくありません。
「日頃気になることを話そう」と切り出していながら、院長が自分のビジョンや思いを語り続け、相手がうんざりしているケースが散見されます。

目的は「関係性の構築」なので、まずは医師の話を聞きましょう。自覚がない院長もいるので「言いたいことは我慢する」と強く意識してください。

2.黙って相手の話を聞く
医師の意見についつい口を挟み、「それは違う」と否定したり、説得したり、言い訳をしたりするのは禁物です。医師は「安全領域」が失われていると感じると、新しいアイデアや思いがあっても「聞く姿勢がない」とジャッジされ、気になることがあっても報告をしません。関係性を構築するためには沈黙忍耐力が求められます。

3.聞かれたことに対して適格に返す

できない場合も検討したうえでクイックにフィードバックする。これをきちんと行うことで、医師との信頼関係が芽生えてきます。

たったこれだけのことですが、様々な病院で実証済みで、ほとんど3カ月たたないうちに効果を実感しています。ハードルは続けること。

まとめ

多くの院長、理事長はとても優秀な方です。医師であり病院運営を続けるために、いろんなことを乗り越えてここまできています。

医師は優秀ですが経営のことはよくわかっていません。そういう医師に対し無意識に「お前たちは、まだまだわかっていない」と心のどこかで思ってしまいます。

他のスタッフに対しても同様で、そういう無意識は無意識に伝わっているもので、スタッフは病院にとって重要な問題だと思っても「どうせ聞いてくれない」と思ってしまい、だんだん言わなくなってしまいます。これは組織にとって危険なことです。

その院長が黙って話を聞くと、権限のある人が変わり始めたことを感じて、相手も変わり始めます。

実際にこの方法で面談した病院では「眼からウロコだった」「自分が何も言わない方が収益が上がった」「もっと早くやっていればよかった」と効果を実感しています。

経営者がスタッフに勝ちに行くとスタッフはそれ以上の仕事をしなくなります。なぜなら経営者が勝ちにいくとスタッフはその通り演じてしまうからです。仕事を任せられない人は無意識に勝ちにいき、組織が成長を停滞させます。

「他人」と「過去」は変えられません。変えられるのは「自分」と「今」だけなのです。

まずは得たい結果から逆算して、できる行動から変えてみましょう。

 

 



 
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執筆者

 

 

 

 

TEPPEI SUGIURA

株式会社メディテイメント

代表取締役  杉浦鉄平

30年以上にわたる病院勤務(臨床15年、看護部長10年、事務局長5年)と、病院コンサルタント経験で培った、病院経営における人、モノ、カネすべての問題を解決するメソッドを体系化。このメソッドをより広く普及させるためにメディテイメント株式会社を設立。また、セコム医療システム株式会社顧問に就任。「病院再生コンサルタント」として、多くの病院の組織変革を実行し、高い評価を得る。現在は、コンサルティングと同時に、病院管理者研修、病院の意図を理解し、自律的に行動する医療経営人財を育成する「医療経営参謀養成塾」を運営。

 

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