病院は赤字経営を根底から解決する、3つの視点とは

病院経営について

病院の赤字割合は近年4割を推移し、医療を取り巻く経営環境の厳しさを表しています。そんな中、経営改善策の論点も「戦略論」から「人」にシフトしてきています。なぜなら、どれだけ優れた戦略、優れた戦術、優れた制度があっても、成果は実行力と実践力で決まるからです。

病院の4割が赤字経営!?

独立行政法人医療福祉機構「平成29年度病院の経営状況について」によると、病院類型別の赤字割合は、一般病棟は前年の41.3%から4.5ポイント下がり36.7%になりましたが、これは一時的で年々増加する傾向はおそらく変わりません。近年は費用増が収益増を上回るいわゆる「増収減益」になっています。

一方これまで平均在院日数の短縮にあわせて低下してきた一般病床の病床利用率が、近年は横ばいから上昇に転じています。(図2)

これは病床数の削減や、病床利用率の高い地域包括ケア病棟の普及、2025年に向け高齢者(とくに後期高齢者)が増えているため、ニーズが高まっていることの影響が大きいと考えられます。

その影響で平成25年度以降続いている低い医業利益率の水準から抜け出すまでには至っておらず、今だ赤字病院割合が4割ということを考えると、引き続き厳しい経営状況に直面していると言えます。

 図1 平成24年度~平成29年度病院の黒字病院・赤字病院割合病院類型別

図2 一般病床の病床利用率および平均在院日数の推移

出典:独立行政法人医療福祉機構「平成29年度病院の経営状況について」 

このように、これからますます病院を取り巻く経営環境が厳しさを増すと、経営改善策の論点も「戦略」から「人」にシフトしていく必要があります。図3のように人件費が固定費として経営を圧迫するので粗利率を上げる=生産性の向上させることが重要課題となるです。

図3 医療法人の人件費に推移

 

病院の赤字解消は取り組みやすいハードだけでは片手落ち

企業の経営資源分析に良く使われるツールに「7S」というのがあります。7Sは世界有数の戦略コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱し、組織を考えるうえで必要な7つの経営資源の相互関係を表したフレームワークのことです。

優れた企業では、その7つの要素が関連して相互に作用しているとも言われており、組織の現状を改革するために、今では多くの経営幹部や経営者、組織変革コンサルタントなどが利用しています。

マッキンゼーの7S

また、この7つの分析の要素は比較的変更が可能な「ハードの3S」と、変更に時間がかかる「ソフトの4S」に分類されます。

ハードの3Sは組織の構造に関する要素、ソフトの4Sとは、従業員など人に関係する要素のことです。

手をつけやすいという理由から、結果として、ハードをしっかり設計し、運用すればうまくいくと考えがちなのですが(企業変革を行う場合にもハードのみに手が入れられる場合が多い)、重要なことは、ハードとソフトが融合し、なおかつ整合していることです。

 

病院の赤字経営を根底から改善するには!?

病院の例だと病床や診療の再編、コストマネジメント、人事評価制度の見直しなどによって経営を見直しなどがハードの3Sになりますが、どんなに優れた戦略、優れた戦術、優れた制度を作ったとしても、結果は実行力と実践力次第。つまりそれらの戦略を実行する人が動かなければ望む結果は得られません。

例えば新しい人事評価制度を作ったり、IT活用による業務効率化、コスト削減をはいわゆる仕組み(System)を変えることになりますが、実際それを実行するのは人です。つまり、ルールや仕組みを作っても、それを支える人が動かなれば機能しません。

逆に最適配置やスキルアップトレーニングなどを行っても、それを支えるシステムや組織構造、そもそもの戦略がなってなければ、やはり組織のパフォーマンスは上がりません。

どちらが大事というのではなくハードとソフトが整合性を持っていることが重要なのです。

赤字経営の病院に共通する特徴は、そもそも何を目指すかという「ビジョン」と、なんのためにそれをやるのかという「理由」があいまいなことです。取り組みやすい戦略論に偏ってしまうのは、このような背景も関係しているのかもしれません。

ビジョンとそれをやる理由を、わかりやす言えば「夢」と「志」ということになります、この夢と志に整合性がないと、現場は経営改善策を示されても、全体感としてプロセスがイメージできないので行動ができません。

ポイントは、ハードの3Sという戦略を支えるのは、ソフトの4Sであるという構造をしっかり理解することでしょう。

 

病院の赤字経営を構造から立て直すために何が必要?

組織のパフォーマンスは、まずソフトの4Sである「共通価値観」の浸透化を前提とした、人材(人材力)×組織(組織力)×スキル(関係力)で決まります。

  • 「人材力」でどんな人材がいて、どんな強みと弱みを持っている人が自分たちのチームにいるのかを把握し
  • 「組織力」でどんな目標を掲げ、ベクトルを合わせ進むスピードを調整しながら、個人のやりがいとリンクさせて、達成に向けての戦略、戦術を練り
  • 「関係力」で個人のヤル気を引き出し、モチベーションを上げながらチームとしての結びつきを強くし、助け合い切磋琢磨しあう関係を築いていくことによって

人と業績を同時に成長させていく仕組みをつくっていくことになります。

しかし、人が成長するまでには時間がかかります。そのタイムラグをどうやって埋めるか、それが最も困難な課題ですが、解決策は今ある人財を積極的に活かす方法を学び実践することです。

「個人の強みや長所を最大限に生かす組織(チーム)にすること」をチームビルディングと言います。

チームワークは良く耳にする言葉ですが、チームビルディングとの違いはというと、チームワークは、チームがすでに行っている仕事や活動がうまくいくための、メンバーの団結や連携という意味で理解され、チームビルディングはそのための個人の関係をその都度つくること(ビルディング)を実践していくことと解釈されています。

病院の赤字経営を構造的から立て直すためには、7Sとチームビルディングの3要素(人材力×組織力×関係力)の融合に取り組むことが必須となります。

参考までに人材力を活かすために筆者が使っているツールで「効き脳診断」というがあります。これは思考の癖を定量化しメンバーの強みを客観的に知る方法で、今では個人の強みや長所を活かすチーム作りには欠かせなくなっています。下記のページから希望の方には無料診断も行っていますので興味のある方はぜひご覧ください。

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チームビルディングに関する経営や組織改革の情報は、これから数回解説したいと思います。

 

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執筆者

 

 

 

 

 

 

TEPPEI SUGIURA

株式会社メディテイメント

代表取締役  杉浦鉄平

30年以上にわたる病院勤務(臨床15年、看護部長10年、事務局長5年)と、病院コンサルタント経験で培った、病院経営における人、モノ、カネすべての問題を解決するメソッドを体系化。このメソッドをより広く普及させるためにメディテイメント株式会社を設立。また、セコム医療システム株式会社顧問に就任。「病院再生コンサルタント」として、多くの病院の組織変革を実行し、高い評価を得る。現在は、コンサルティングと同時に、病院管理者研修、病院の意図を理解し、自律的に行動する医療経営人財を育成する「医療経営参謀養成塾」を運営。

 

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