部下を叱りかたがわからない。そんな上司が増えています。
「厳しいことを言ったら嫌われる」「やめてしまったらどうしよう」
このような理由で叱ることをためらってしまうようです。
では嫌われずに部下のモチベーションを高める伝え方ができたらどうでしょう。
今日は部下のモチベーションを高める効果的な対話術についてお伝えします。
部下のモチベーションを下げる叱り方
駅のホームで「駆け込み乗車はおやめください」というアナウンスが流れたとたん、乗客は慌てて階段を駆け上ってきます。「危ないですから黄色い線の内側に下がってお待ちください」という注意喚起は誰も聞いていません。
「廊下を走るな」「静かにしなさい」と言ってやめる子供がいるでしょうか。
否定語を使うと人は動いてくれないのです。
してほしくないことは、してほしいことに変換して伝えるのがコツ。
否定語は肯定語に変えることで相手の行動を促すことができます。
最近では駅のアナウンスも変わってきました。
「次の列車が前の駅を発車しておりますので、次の列車をご利用ください」は肯定語、つまり、してほしいことに変換しています。
しかし、私たちは相手が動いてくれないことにイライラして、つい逆効果な指導の仕方をしてしまうことがあります。
「もっとヤル気を出せ」「積極的に意見を言え」「ミスをするな」と言っても無駄なことです。
そう言われて、ヤル気をだしたり、意見を出したり、ミスをしなくなるなら苦労はしません。
これは最も部下のモチベーションを下げる叱り方なのです。
部下も「モチベーションを上げたい」そう思っている
自分でも頑張っているのに、どうしようもないことをただ改善しろと言われても、自己嫌悪に陥るばかり。恐らく本人が一番なんとかしたいと思っているはずです。
そうしたいのはわかっているけど意識的な努力ではどうしようもない。つまり、それは意識の問題ではなく、無意識的にそうなってしまうということです。
叱るというメッセージは多くの場合、意識に働きかけています。
「動作」レベルの指示なら意識に語りかければいいでしょう。例えば「金曜日にレポートを出してくれ」という指示ならそのまま伝えればよいわけです。
しかし「動詞」レベルの指示は意識だけでは行動できません。特に「ヤル気を出せ」のようなあいまい動詞は意識に叩き込もうとしても不毛な努力に終わってしまいます。
部下が意識できることにフォーカスする
ある日、訪問先にネガティブ発言を繰り返す新任の師長さんがいました。
そういう場合「もっとポジティブに考えよう」と励ましても、意識することはできません。
むしろ意志の力で努力すればするほど、想像力(イメージ)は強力となり、その意志の努力とは、反対の結果となってしまいます。(「努力逆転の法則」:エミール・クーエ)
意識(思考)は言葉と連動しています。
言葉⇒感情⇒思考⇒行動⇒結果の順番ですべて連動しているので、思考や行動だけを変えようとてもうまくいかないのです。
まずは、自分が普段どんな言葉を使っているか、自分のマイナス言葉のパターンを認識することが先決です。
そこで、意識できないメッセージを(B)とします。それとは別に意識できるメッセージを(A)とします。(B)を動かすためには(A)を使う。このフレームで部下の潜在意識を発動させるというテクニックです。
では実際に私がコーチングしたときの事例で解説します。
ネガティブな思考から抜け出せない師長へのアドバイス。
「手首に輪ゴムをつけてマイナスの言葉を言ったらパチンとやってごらん。(A)すると自分のマイナスの口癖を認識できる。そして、その時になんでもいいからプラスの言葉を言ってみよう。(A)すると感情が変わってくるので、だんだんポジティブな思考になっていくはずだよ(B)」
意識できるゴムパッチンという行動(A)を実行すると、潜在意識の中で(B)が動き始めるというロジックです。ちなみにこれは私が昔3ヶ月間やり続け、とても効果感じたワークです。
部下のモチベーションを高める対話術
大事なことなので、もう少し詳しく解説します。
この話し方のコツは極端に(B)を強調しないことです。
いかにも「狙っている」という話し方では通りません。さらっと自然なセリフの中で言うことが有効です。
「まず(A)をやってみよう、そうすれば(B)になるかもしれないよ」というフレーム。
もう一つ例を話しましょう。
このフレームをしっていると、自信がない部下にもこんな言い方ができます。
「この仕事にチャレンジしてみないか。(A)失敗しても成功してもやりきったという達成感がある。(B)すると自信につながる(B)かもしれないよ」
以上2つの例からもわかるように(A)から(B)、(B)から(B)にうまく持っていくことで潜在意識に影響を与えることができます。
そして、この対話術のメリットは、もし目に見える効果がなかったとしても、あなたには何も失うものはないということです。
極端に(B)を強調しなかったなら「(A)をやってみよう、そうすれば(B)になるかもしれないよ」というメッセージは、ほとんどの場合(A)を終えたときには意識では忘れているのです。だから「(A)したのに、(B)にならなかった」という反発はまず起きません。
ぜひ部下とのリーダートークに積極的に組み込んでみてください。
出典:石井裕之著 「カリスマ 人を動かす12の法則」
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執筆者
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TEPPEI SUGIURA
株式会社メディテイメント 代表取締役 杉浦鉄平 30年以上にわたる病院勤務(臨床15年、看護部長10年、事務局長5年)と、病院コンサルタント経験で培った、病院経営における人、モノ、カネすべての問題を解決するメソッドを体系化。このメソッドをより広く普及させるためにメディテイメント株式会社を設立。また、セコム医療システム株式会社顧問に就任。「病院再生コンサルタント」として、多くの病院の組織変革を実行し、高い評価を得る。現在は、コンサルティングと同時に、病院管理者研修、病院の意図を理解し、自律的に行動する医療経営人財を育成する「医療経営参謀養成塾」を運営。 |